【献血で卒論】青年期における献血行動について-援助規範意識と攻撃性ならびに性格特性との関連-


青年期における献血行動について

-援助規範意識と攻撃性ならびに性格特性との関連-

大学時代の、献血に関する卒業論文を載せてみた。・・・がちの内容すぎて、誰が読むねん!!

もくじ

もくじ

問題と目的

  1. 血液事業について
  2. 援助意識と援助行動
  3. 攻撃性
  4. 性格特性
  5. 本研究の目的

方法

  1. 調査対象 
  2. 実施期間
  3. 手続き
  4. 質問紙の構成

結果

  1. 分析にあたって
  2. 群分けによる一元配置分散分析
  3. 献血未経験者における,献血への「関心」および「協力意思」と各尺度との相関
  4. KJ法による分類

考察

  1. 群分けによる一元配置分散分析
  2. 献血未経験者における,献血への「関心」および「協力意思」と各尺度との相関
  3. KJ法による分類
  4. まとめと今後の課題

問題と目的

1.血液事業について

わが国では,病気やけがの治療のため,輸血や血液製剤を必要とする人たちが数多くいる。血液製剤は,健康な方々から自発的に無償で血液を提供してもらう「献血」によって作られている。

そうした血液事業は献血によって支えられており,血液を必要とする多くの人々が日々救われている。人工血液は未だ開発できておらず,献血に頼らざるを得ないのが現状である。

献血には,血液の成分全てを採取する「全血献血」と,特定の成分のみを採取する「成分献血」がある。

「全血献血」には200mlと400mlの献血がある。しかし近年は400ml献血の需要が高まっている。人間一人ひとりの血液は,たとえ血液型が同じでも微妙に違っており,より少ない人数の献血によってまかなわれていればいるほど輸血時の発熱・発疹・感染等の副作用低減といった安全面での効果が期待される。そうした問題から,全血献血の多くが400ml献血で行われている。

そして「成分献血」には2種類あり,「血小板献血」と「血しょう献血」がある。成分献血は成分採血装置を使用して血小板や血漿といった特定の成分だけを採血し,体内で回復に時間のかかる赤血球は再び体内に戻す方法である。よって,成分採血は身体への負担も軽く,多くの血漿や血小板を献血してもらえるという特長がある。

人間の血液の量は体重の約13分の1と言われている。血液の量の12%を献血しても医学的には問題がなく,献血の量は安全なものであるとされている。また,献血後の血液の「量」は水分を摂取することにより短時間で回復する。しかし,血液の「成分」が回復する速さはその成分によって異なっている。

回復する速さには個人差があるが,目安として血漿成分は約2日,血小板成分が約4~5日,赤血球は約2~3週間で回復する。献血者の安全を最大限守るために,血液の成分が完全に回復するまでの期間を考慮し,献血の種類によってそれぞれ次回献血可能な日までの日数が定められている。

現在は人々の善意により自発的に無償で献血は行われているが,かつては「売血」や「預血」によって多くの血液が賄われていた。1950年に民間の血液銀行が設立されたのち,血液銀行の業務を行う機関が全国に創設された。そこでは「献血」だけでなく,「売血」や「預血」を含めた3つの採決方式に基づいた運営形態があった。

「売血」とは,採血するにあたって供血者にいくらかの金品を給付する方式で,「預血」とはあらかじめ血液を提供しておけば,本人や家族などが輸血を必要としたときに,そのぶんだけ優先的に供血される方式をいう。そのなかでも「売血」は圧倒的な採血量をあげていた。

しかし,この売血は「供血者の健康」と「血液の品質の低下」が問題となった。血液銀行業務の中でも,売買血方式が他を圧倒し始める一方で,供血を一種の職業と考える,いわゆる職業的給血者なる者が存在しはじめた。そうした人々のなかには,偽名を使って血液銀行を渡り歩く者や,採血を強要する者がいた。

このような売血常習者から採血された血液は赤血球が少なく赤みにかけており「黄色い血」と呼ばれ,またそういった血液を輸血した患者の多くが肝炎を発症させる事態となった。1964年に,駐日大使であったエドウィン・O・ライシャワーがアメリカ大使館門前で大腿を刺され重傷を負った際に輸血を受け,この輸血が元で肝炎を発症するという事件が起こった。

この事件は「ライシャワー事件」と呼ばれ,これがきっかけになり売血問題がクローズアップされ,売血が衰退し献血を推進する動きが高まった。そして1990年に売血が完全に中止され,輸血用血液は献血によりまかなわれるようになった。

現在,若者の献血離れが現在大きな問題となっている。10・20代の献血者数は平成14年には約218万人だったが,平成23年は約132万人と,この10年間で約40%も減少している状況である。

この現状は若者の人口数減少だけが問題ではない。平成12~21年の献血者減少率と人口減少率を比較すると,10代については人口減少率に対して約2.8倍,20代については1.9倍と人口減少率を大きく上回るスピードで減少している。

若者の献血人口が減る一方で,輸血を必要とする高齢者はますます増えることから,血液を安定的に供給するためには,今まで以上に,10・20代の若者も含めた多くの人々の献血への協力が必要となってきているのである。

厚生労働省の『若年層献血意識に関する調査結果報告書』(2006)によると,未経験者の献血をしたことのない理由として,「針を刺すのが痛くて嫌だから」32.4%,「なんとなく不安だから」30.6%,「恐怖心」23.6%,「健康上出来ないと思ったから」20.1%などが挙げられた。

テレビコマーシャルや街頭での呼びかけなど,広報活動に力を入れているものの,若者の献血者は依然と減少傾向にあり若者の献血離れに対して的確な対策をとることができていないのである。

 

2.援助意識と援助行動

ボランティアという言葉は,特別な人の特別な活動ではなく,ごく普通の日常生活の中に定着してきた。この言葉は,最初に17世紀のイギリスにおいて使われたと言われている。当初は,自警団を意味し,次第に自発的に奉仕活動をする人などの意味で用いられた。

 ボランティアの性格についての定義として列挙されるときに「自発性」,「公共性」,「無償性」の3つが主に挙げられる。「自発性」は,誰から言われるのではなく,社会的課題に対して自分自身の自由な意志で進んでいくことを指す。

「公共性」は,私的な生活を越えて,自己の利益のためではなく,活動が他人や社会全般の利益の役に立つということである。「無償性」は経済的な報酬(報酬,物品など)をもらうことを目的としないことをいう。

古川・大束・大山・柴田(2004)は,大学生のボランティア活動の動機について調査を行った。ボランティア経験のある人々に対し,過去にどういった動機を持ちながら活動を開始したのか分析を行ったところ,大学生では「自分の役に立つと思ったから」「就職などで有利になるようにしたいから」などといった「利己的動機」を挙げる人が多いことが示された。

つまり,ボランティア活動に従事する青年においては,ただ単に人のためというのではなく「自分のため」といった利己的な考えがボランティア活動の大きな動機となっているといえる。

数多くあるボランティアにおいて献血もそのなかのひとつである。

高木(1987)によると,献血行動は臓器提供行動と心理的に同じグループの行動として多くの人々に理解されている。また,これらの行動は他の向社会的行動に比較して,努力や危険が伴う。よってその援助行動を行わなくても他者から非難されることが少なく,自尊心が低下するようなこともないと知覚されていることが明らかになっている。

箱井・高木(1987)の研究では,献血経験者が献血未経験者よりも自己犠牲規範意識が高いという結果が得られている。しかし,対象者が10~80歳代までと幅広く,青年献血者が高い自己犠牲規範意識を有しているとはいえない。現代減少しつつある青年期の献血者においても同様の特徴がみられるのであろうか。

3.攻撃性

 攻撃性に関する研究は臨床心理学をはじめ,人類学,動物行動学などさまざまな分野で行われている。攻撃性の研究においては,攻撃性を大きく反応的攻撃(reactive aggression)と道具的攻撃(proactive aggression)の2つにわける分類方法が広く用いられてきた。

また,攻撃性を大きく一つの特徴として捉えるのではなく,再分化して複数の攻撃性を区別する必要性が指摘されており,山崎(1999)は,反応的攻撃について,表出性攻撃(expressive aggression)と不表出性攻撃(inexpressive aggression)に分類している。表出性攻撃とは,怒り感情を,時間をおかずに言語的あるいは身体的に表出することであり,不表出攻撃とは,怒り感情を持ちながらも,その怒り感情を表出せずに心の中に抑制した状態での攻撃性を指す。

安立(2001)は,攻撃性という概念を講義に人間の持つ心のエネルギーとして考え,攻撃性という概念を広義に人間の持つ心のエネルギーとして考え,攻撃性を「破壊的な力」としてだけでなく「能動的な力」として捉え,包括した力自体に生きる原動力が存在するという視点を含めた攻撃性の二面性に着目した。

また,攻撃は必ずしも他者に向けられたり他者から被ったりするとは限らないという攻撃の方向を新たに提唱し,破壊的な力としての攻撃性の諸側面について,攻撃性の向けられる方向性(自己・対象),表出の有無(表出傾向・保持傾向)の2次元から攻撃性を捉えている。

自己に向けられる攻撃として,「自傷行為」が挙げられる。特に若年者層に多いとされ,思春期の精神保健,健全育成における重要な問い題の一つとして扱われている(門本,2006)。

角丸(2004)は,大学生の自殺・自傷行為に対する意識調査を実施し,被験者のうち19.4%のものが自傷経験を有するか,もしくは自傷行為をしようと考えていたということを明らかにしている。

自傷行為に至るきっかけとしては①イライラによる衝動,②自己陶酔,③誰かに気付いてほしいというクライシスコール,④なんとなくといった解離状態の4つを挙げている。そうした自傷行為のなかでも,近年,若者の間で多くみられるのが「リストカット」である。

献血はリストカットと似たような特徴が見られる。注射針を腕に刺されることで痛みを感じ,自分の血液が抜き取られていくのを見ることが出来る。

こうした「身体の痛み」や「血液の流れ出る光景とその感覚」はリストカットと献血の双方に当てはまるといえる。以上のことから,献血の自傷行為としての側面は否定できないと考えられる。実際,リストカッターが,リストカットの代用として献血を行うこともあるという。

針が刺さる瞬間が快感だという人や,針を刺される痛みと快感,ありのままの自分を認めてもらえる安心感,やすらぎがリストカットに似ていると感じた人もいるといわれている。以上のことから,献血は自傷行為の代用となりうるものであり,献血を行う人々において攻撃性が自己に向かう傾向があると考えられる。

4.性格特性

性格特徴のなかで,一貫して出現する行動傾向やそのまとまりを特性といい,「神経質さ」や「まじめさ」などのパーソナリティを記述する性質のことを指す。特性をパーソナリティ構成の単位と見なし,各特性の組合せによって個人のパーソナリティを記述する立場を性格特性論という。

類型論の問題点が,多様なパーソナリティを理論的に想定された少数の型に押し込んでしまうことにあるとすれば,パーソナリティの特性論的な表現は,その自由度の高さに1つの特徴がある(安藤,2009)といえる。

齊藤・荻野(1996)が,Y-G性格検査の性格特性をベースに性格特性ごとに16種類の欲求・行動の比較を行った。その結果,援助行動傾向において「活動的」「のんき」「支配性」「社会的外向」特性では高得点群が低得点群より有意に高く,援助欲求においても「活動的」「のんき」「支配性」「社会的外向」特性では高得点群が低得点群より有意に高いことが示された。

このことから,活動的な性格やいつも何か刺激を求めるなどの気軽な衝動的な性質,リーダーシップ性,社会的・対人的接触を好む性質をもつ傾向の人々が援助意識ならびに援助行動を起こしやすいことがわかる。

献血は被援助者と直接の関わりがないことが,他の多くの援助行動と大きく異なる特徴である。被援助者と直接的な関わりのない献血活動に協力する人々も,齊藤・荻野(1996)が示したような,活動的な性格や気軽な性質,社会的・対人的接触を好む性質をもつ傾向にあるのだろうか。

5.本研究の目的

第一に,大学生のボランティア活動における動機が利己的なものであることが多いなか,献血に対して協力的な若年層は減少の一途をたどっている。献血に協力的な人々は高い奉仕精神を持つがゆえに献血という援助行動を行っていると考えられる。そのため,献血行動と援助意識について検討することを目的とする。

第二に,献血の自傷行為としての側面は否定できない。自傷行為は自分自身を傷つける行為であることから,自己への攻撃性が高いと考えられる。そのため,献血行動と自己へむかう攻撃性について検討することを目的とする。

第三に,献血は被援助者と直接の関わりがないという特徴がある。そのような特徴をもつ献血に対し,話し好きで社交的な人よりも寡黙で落ち着いた人々のほうが協力していると考えられる。そのため,献血行動と性格特性について検討することを目的とする。

以上の目的のために,本研究において検討する仮説をまとめると,以下の通りである。

  1. 仮説1:献血に協力的な人々は,献血以外のボランティア活動を行う人々・ボランティア活動を行わない人に比べ,援助規範意識尺度の「自己犠牲規範意識」得点が高い。
  2. 仮説2:献血に協力的な人々は,献血以外のボランティア活動を行う人々・ボランティア活動を行わない人に比べ,攻撃性質問紙の「自己破壊行動」,「自責感」得点が高い。
  3. 仮説3:献血に協力的な人々は,献血以外のボランティア活動を行う人々・ボランティア活動を行わない人に比べ,Big‐Five尺度短縮版の「外向性」得点が低い。

方法

1.調査対象

関西圏の大学生311名を対象に質問紙調査を実施した(学内献血にて実施108名,授業内や友人に配布213名)。有効回答者278名(男性150名,女性128名)で,平均年齢は19.91歳(18~24歳,SD=1.273)であった。

2.実施期間

2012年11~12月

3.手続き

講義時間を用いて調査用紙を一斉配布し回答してもらったほか,知人の協力を得て,直接また間接的に配布し回収した。また,大学内での学内献血に来た学生には,献血終了後に質問紙を配布し回答してもらった。

4.質問紙の構成

(1)フェイスシート(学年,年齢,性別)

(2)援助規範意識

箱井・高木(1987)によって作成された援助規範意識尺度を用いた。他者を援助することに関する規範意識の個人差を測定する尺度である。4つの下位尺度で構成され,「返済規範意識」9項目,「自己犠牲規範意識」8項目,「交換規範意識」5項目,「弱者救済規範意識」7項目からなる。29項目それぞれについて“非常に反対する”から“非常に賛成する”の5段階で評定してもらった。

本研究でも先行研究にならい,これら4つの下位尺度得点を算出した。I-T相関と項目全体のα係数を参照し項目分析を行ったところ,項目20“どんな場合でも,人に迷惑をかけてはいけない”が除外され,最終的に28項目が採用された。クロンバックのα係数は「返済規範意識」が.658,「自己犠牲規範意識」が.729,「交換規範意識」が.505,「弱者救済規範意識」が.658,尺度全体が.782であった。

(3)攻撃性

安立(2001)によって作成された攻撃性質問紙を用いた。

攻撃性質問紙は,

①自己主張・適応行動などの能動性を測る「積極的行動」②自己攻撃性(内包傾向)を測る「自責感」③自己攻撃性(表出傾向)を測る「自己破壊行動」④対象攻撃性(内包傾向)を測る「猜疑心」⑤対象攻撃性(表出傾向)を測る「対象攻撃行動」

の5要素から成る質問紙であり,表出傾向については,実際に行動するかどうかを問うのではなく,あくまで欲求(“~したくなる“)について問う項目となっている。「積極的行動」9項目,「自責感」7項目,「自己破壊行動」5項目,「猜疑心」4項目,「対象攻撃行動」8項目の5つの下位尺度からなる。33項目それぞれについて“まったくあてはまらない”から“非常にあてはまる”の6段階で評定してもらった。

全33項目について,5因子解で因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った。その結果,安立(2001)と同様の因子構造(累積説明率39.355%)が得られたため,全33項目を採用した。また,各下位尺度について,信頼性分析を行った結果,クロンバックのα係数は「対象攻撃行動」が.807,「積極的行動」が.789,「自責感」が.752,「自己破壊行動」が.714,「猜疑心」が.726,尺度全体が.853であった。

(4)性格特性

中根・並川・野口・谷・脇田(2009)によって作成されたBIG-FIVE尺度短縮版を用いた。5つの下位尺度で構成され,「情緒不安定性」5項目,「外向性」5項目,「開放性」5項目,「調和性」5項目,「誠実性」5項目からなる。30項目それぞれについて“まったくあてはまらない”から“非常にあてはまる”の7段階で評定してもらった。

本研究でも先行研究にならい,これら5つの下位尺度得点を算出した。また,各下位尺度について,信頼性分析を行った結果,クロンバックのα係数は「外向性」が.843,「情緒不安定性」が.819,「開放性」が.777,「調和性」が.745,「誠実性」が.763,尺度全体が.706であった。

(5)献血行動に関して

献血への関心の高さや献血の回数,献血以外のボランティア経験の有無とその内容を尋ねた。また,献血協力者には,献血に訪れた理由を自由記述で回答してもらった。それ以外の被検者については,献血経験のない人には献血をしない理由を,献血経験のある人には献血をした理由を自由記述で回答してもらった。

献血マイナスイメージ尺度を,丹下(1999)の献血ネガティブ尺度を参考に14項目作成した。14項目それぞれに“まったくあてはまらない”から“非常にあてはまる”の5段階で評定してもらった。12項目からなる献血イメージ尺度について,因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った。

因子数は内容的妥当性を考慮して,3因子解を採用した。複数の因子に同程度に負荷する項目が見られたのでこれを削除し(項目5“献血によって,少しでも自分の生活に支障が出るのは嫌だ”),計11項目を採用し,献血イメージ尺度とした。累積説明率は48.832%であった。

第1因子は,“採血するのが怖い”,“献血するだけの勇気がない”などの3項目からなり,「献血恐怖」と命名した。第2因子は“献血しても自分の体はすぐに元に戻る”,“自分は貧血気味だから不可能だ”などの4項目からなり,「身体への影響」と命名した。第3因子は“自分の健康状態について知ることが出来る”,“献血すると物(お菓子,ジュースなど)がもらえるからうれしい”などの4項目からなり,「献血メリット」と命名した。各下位尺度について,信頼性分析を行った結果,クロンバックのα係数は「献血恐怖」が.795,「身体への影響」が.746,「献血メリット」が.732,尺度全体が.852であった(Table1,2)。

結果

1.分析にあたって

 被検者を献血の有無,ボランティアの有無によって3群に分類した。献血の経験がある人に加え,献血の受付に行ったが献血不可能であった人を「献血群(N=128)」, 献血以外のボランティアの経験のある人を「ボランティア群(N=65)」,それ以外の人を「なし群(N=85)」とした。

2.群分けによる一元配置分散分析

「献血群」,「ボランティア群」,「なし群」の3群間で,援助規範意識・攻撃性・性格特性・献血へのイメージの差を検討するために,①援助規範意識尺度(「返済規範意識」,「自己犠牲規範意識」,「交換規範意識」,「弱者救済規範意識」),②攻撃性質問紙(「対象攻撃行動」,「積極的行動」,「自責感」,「自己破壊行動」,「猜疑心」),③BIG-FIVE尺度短縮版(「外向性」,「情緒不安定性」,「開放性」,「調和性」,「誠実性」),④献血マイナスイメージ尺度(「献血恐怖」,「身体への影響」,「献血メリット」)の各下位尺度のそれぞれの平均値について,一元配置分散分析を行った(Table2.3.4.5)。

(1)援助規範意識の比較

「献血群」,「ボランティア群」,「なし群」の3群間で,援助規範意識においては特に有意な差はみられなかった。

(2)攻撃性の比較

「献血群」,「ボランティア群」,「なし群」の3群間で,自責感(F(2,275)=3.86,p<.05)で群の主効果が有意であった。多重比較(Tukey法)の結果,自責感では献血群がなし群に比べて有意に得点が高かった。

(3)性格特性の比較

「献血群」,「ボランティア群」,「なし群」の3群間で,BIG-FIVE尺度短縮版では有意な差は見られなかった。

(4)献血マイナスイメージの比較

「献血群」,「ボランティア群」,「なし群」の3群間で,献血恐怖(F(2,275)=37.32,p<.001),身体への影響(F(2,275)=45.16,p<.001),献血メリット(F(2,275)=73.26,p<.001)で群の主効果が有意であった。多重比較(Tukey法)の結果,献血恐怖,身体への影響,献血メリットの全てにおいて,献血群がボランティア群となし群に比べて有意に得点が低かった。

2.献血未経験者における,献血への「関心」および「協力意思」と各尺度との相関

献血未経験者の献血に対する「関心」ならびに「協力意思」と,①援助規範意識尺度(「返済規範意識」,「自己犠牲規範意識」,「交換規範意識」,「弱者救済規範意識」),②攻撃性質問紙(「対象攻撃行動」,「積極的行動」,「自責感」,「自己破壊行動」,「猜疑心」),③BIG-FIVE尺度短縮版(「外向性」,「情緒不安定性」,「開放性」,「調和性」,「誠実性」),④献血マイナスイメージ尺度(「献血恐怖」,「身体への影響」,「献血メリット」)の各下位尺度との相関係数を算出した(Table6.7.8.9)。

(1)援助規範意識の各下位尺度との相関

関心,協力意思と援助規範意識の各下位尺度において,関心と自己犠牲規範意識に弱い正の相関,協力意思と返済規範意識,自己犠牲規範意識に弱い正の相関がみられた。

(2)攻撃性質問紙の各下位尺度との相関

関心,協力意思と攻撃性質問紙の各下位尺度において,関心,協力意思ともに自責感と弱い正の相関がみられた。

(3)BIG-FIVE尺度短縮版の各下位尺度との相関

関心,協力意思とBIG-FIVE尺度短縮版の各下位尺度において,関心,協力意思ともに有意な相関はみられなかった。

(4)献血マイナスイメージ尺度の各下位尺度との相関

 関心,協力意思と献血マイナスイメージの各下位尺度において,関心と身体への影響に弱い負の相関,協力意思において中程度の負の相関がみられた。また,関心,協力意思ともに献血メリットと中程度の負の相関がみられた。

3.KJ法による分類

 献血経験者には献血に協力した理由と献血の感想を,献血経験のない人には献血をしなかった理由を自由記述式で尋ねたものを,KJ法により分類を行った。

(1)献血に協力した理由(初回)

献血を初めてする人,献血回数が一回の人に対し,献血に初めて協力した理由を尋ねたものを,KJ法により分類した(Table10)。上位3カテゴリーは,「時間があったから」「友だちに誘われて」「社会貢献」であった。

(2)献血に協力した理由(複数回目)

複数回献血者に対し,2回目以降に献血に協力した理由を尋ねたものをKJ法により分類した(Table11)。上位3カテゴリーは「時間があったから」「学校でしていたから」「人の役に立つから」であった。

(3)献血をしない理由

献血未経験者に対し,献血をしたことのない理由を尋ねたものをKJ法により分類した(Table12)。上位3カテゴリーは「機会がない」「貧血持ち」「時間がない」であった。

(4)献血の感想

献血経験者に対し,献血をした感想を尋ねたものをKJ法により分類した(Table13)。上位3カテゴリーは「意外と大丈夫」「またやりたい」「早かった」であった。

考察

1.群分けによる一元配置分散分析

(1)援助規範意識の比較

「献血群」,「ボランティア群」,「なし群」の3群間で,援助規範意識においては特に有意な差はみられなかった。これは仮説1に反する結果となった。「自己犠牲規範意識」において差がみられなかったのは,献血者が献血をする際に自己を犠牲にしているわけではないことを示す。

これはすなわち,献血者が献血において利己的な動機に基づいて行動していると考えられる。献血経験者に対し献血をした理由を尋ねた結果,初回献血者では「友人に誘われたから」「興味があった・やってみたかった」といったカテゴリーが「社会貢献」を上回っており,周囲の影響や好奇心によって献血を行ったといえる。

このような献血行動は自己犠牲的で愛他的な精神から引き起こされたものとは考えにくい。そのような献血経験者が多いために自己犠牲規範意識に差がみられなかったといえる。

(2)攻撃性の比較

「献血群」,「ボランティア群」,「なし群」の3群間で,自責感(F(2,275)=3.86,p<.05)で群の主効果が有意であった。多重比較(Tukey法)の結果,自責感では献血群がなし群に比べて有意に得点が高かった。しかし,自己破壊行動において差はみられなかった。これは仮説2を一部支持する結果となった。

「自責感」は項目内容から判断して,自己否定感や罪悪感といった自己に向けられる否定的感情を測る尺度である。献血経験者群がなにもしていない群と有意差がみられた理由と,献血経験者群とボランティア群に差がみられなかった理由について検討する。

まず,献血経験者群がなにもしていない群に比べ自責感得点が高い理由として,罪悪感の抱きやすさの違いが一番の要因であると考える。

人々が献血の機会と出会うのは主に,街中や学校内の献血バスや献血ルーム前での呼び込みである。こうした献血への協力を呼び掛ける声に対し,献血をしなくては申し訳ないといったような罪悪感を抱きやすい人々が献血行動に向かう傾向にあるといえる。

献血経験者群とボランティア群において差がでなかったのは,ボランティアをしている人々は献血の呼びかけに対して罪悪感を抱いているものの,実際に献血をする機会や時間がなかったり,献血への恐怖感から行動に移せなかったりしていることが推測される。もしくは,献血以外のものに対して罪悪感をもち,それに関したボランティア行動を行っているとも考えられる。

自己破壊行動においてどの群にも有意差がみられなかったのは,献血を自傷行為として行っている人が仮にいたとしてもごく少数だからであろう。本研究では,献血と自傷行為の関連性はみられなかった。

(3)性格特性の比較

「献血群」,「ボランティア群」,「なし群」の3群間で,BIG-FIVE尺度短縮版では有意な差は見られなかった。これは仮説3に反する結果となった。

外向性において差がみられなかった理由として,本実験の被検者の約3分の1が学内献血協力者であったことが挙げられる。学内献血では友人と複数人で献血に協力する人が多く,献血をした理由にも「友達に連れられて」というものが多くあった。外向的な人は,外的な対象との関連において考え,行動し,外的な状況を拠り所として自分自身を方向づける。

よって,友人に連れられて献血に協力する人々は,客観的な状況,集団的な妥当性などによって自己の主要な決意や行動が左右されているといえるので,外向性が高いといえる。

その一方,自らの主体によって知覚された認識,見解を行動基準とする内向的な人々も見受けられる。献血に協力した理由に「少しでも役立てるなら時間は惜しくない」「誰かの役に立つなら」など,社会貢献を理由としたものが少なからずあった。

こうした人々は自己の中に芽生えた社会貢献するべきという意志を行動の基準とし,献血へとむかったと考えられる。このように外向的な人々も内向的な人々もいることから,差が出なかったと考える。

(4)献血マイナスイメージの比較

「献血群」,「ボランティア群」,「なし群」の3群間で,献血恐怖(F(2,275)=37.32,p<.001),身体への影響(F(2,275)=45.16,p<.001),献血メリット(F(2,275)=73.26,p<.001)で群の主効果が有意であった。

多重比較(Tukey法)の結果,献血恐怖,身体への影響,献血メリットの全てにおいて,献血群がボランティア群となし群に比べて有意に得点が低かった。

この結果は,献血経験者が献血未経験者に比べて,献血に恐怖感を抱いておらず,身体への影響も心配していない上に,献血に対してメリットを感じていることを示している。献血経験者はマイナスイメージが低かったために献血行動を起こしたというよりも,実際に献血を体験したためにマイナスイメージが取り除かれたと考えるのが妥当である。

本研究で献血の感想を尋ねたなかでも,「意外に大丈夫だった」「思ったより痛くなかった」など,想像していたよりも痛みや負担感が少なかったという感想が多く含まれていた。こうした経験者の感想を広く公表し,献血が人々の抱いているイメージほど怖いものでもなく,安全であるということをアピールしていく必要がある。

2.献血未経験者における,献血への「関心」および「協力意思」と各尺度との相関

(1)援助規範意識の各下位尺度との相関

関心,協力意思ともに自己犠牲規範意識と弱い正の相関がみられた。自己犠牲規範意識は愛他心に関わる規範意識を表していると考えられる。このことから,献血という行動が愛他的で自己犠牲的な活動であることが示された。

また,協力意思において返済規範意識識に弱い正の相関がみられた。返済規範意識は,援助や好意を受けた人が,その援助に対して自ら援助や行為で報いようとする互恵行動と,人に迷惑をかけた時にはその人に対して償う劇であるといった補償的な規範意識を含む。

返済規範意識と献血への協力意思に相関がみられたのは,誰しもが輸血を必要とする可能性を秘めており,全ての人にとって少なからず関係のあるものだからだと考えられる。将来において輸血という援助が必要になる可能性のある限り,そういった将来の想定される出来事に対して補償的な規範意識を有しているのだと考えられる。

(2)攻撃性質問紙の各下位尺度との相関

関心,協力意思ともに自責感と弱い正の相関がみられた。自己否定感や罪悪感を抱きやすいほど,関心も意思も高い。罪悪感を抱きやすい人が,街中での献血の呼びかけやCMによる献血推進宣伝を通して献血に協力を要請されているのにも関わらず,これまで献血をやっていなかったために少なからず罪悪感を抱いていたと考えられる。

(3)BIG-FIVE尺度短縮版の各下位尺度との相関

関心,協力意思ともに有意な相関はみられなかった。性格特性によって献血への興味・関心の差は変わらないことが示された。

(4)献血マイナスイメージ尺度の各下位尺度との相関

関心,協力意思と献血マイナスイメージの各下位尺度において,関心と身体への影響に弱い負の相関,協力意思と身体への影響に中程度の負の相関がみられた。関心においては,献血に対して関心をもち知識や情報もあり,献血がそれほど身体に影響を及ぼさないと知っているので,このような負の相関がみられたと考えられる。

協力意思においては,献血が身体にそれほど影響はないというイメージをもっている,もしくは身体に自信があり影響は出ないという人が協力しても良いと考えていると推測される。

関心,協力意思ともに献血メリットと中程度の負の相関がみられた。これは献血に関心をもち知識を得ることで献血におけるメリットを感じていると考えられる。また,献血を行うことで得られるものにメリットを感じている人ほど,協力意思が高いことが示された。

3.KJ法による分類

(1)献血に協力した理由(初回)

献血の初回においては,「時間があったから」が一番多い理由であった。時間があってひまを持て余しているときに参加するという声が多いということはつまり,献血を「ひまつぶし」として協力してもらえる環境作りが大切である。

時間をつぶす行動の候補に,献血が思い浮かぶ程度にまで人々に浸透させることができればより献血協力者が増えると考えられる。「時間があったから」に次いで,「友達に誘われた」というのが多かった。特に初めて献血をする場合は知識や経験がないため不安感が高いうえに,献血は恐怖を伴う行動であるため,ひとりでは行きづらいと考えられる。

友人とともに献血へむかうことで恐怖感をやわらげ,精神的にも落ち着いて献血ができると考えられる。青年期の献血行動において,友人の勧誘が大きい要素であることが示された。また,献血に対し「好奇心」をもっている人が多くおり,その好奇心を満たすために献血をする人々が高い割合でいることが明らかになった。

このような好奇心は1回献血を経験すると満たされてしまうと考えられる。このような人々を複数回献血者とするためには,初回の献血において再び献血に協力してもらえるようなしくみが必要である。

(2)献血に協力した理由(複数回目)

複数回目の献血をした理由においても「時間があったから」が一番多かった。より多くの人に,時間があるときに献血へむかってもらえるようにする必要がある。その次は「学校でしていたから」が多く,これは被検者の多くが学内献血協力者であったためであるが,学生にとっては学校で献血を行うことがよい機会であることが示されたといえる。三番目に「人の役に立つから」という理由が多かった。

献血では被援助者とは直接に接することはないが,それでも献血の社会貢献度を認識している人々は献血に協力してくれていることが明らかになった。

(3)献血をしない理由

最も多かった理由は「機会がない」であった。これは,青年期の人々の生活において献血がまだまだ浸透していないものであることを示している。次に「貧血持ち」が多く挙げられた。3番目は「時間がない」であった。

このような人々もひまな時間が全くないわけではない。よって,小一時間でも時間がある時に献血に協力してもらえるように宣伝やPRをしていくことや,環境を整えることが大切だと考える。次に「怖い」という理由が挙げられた。そのような恐怖感をやわらげるために,ひとりではなく友人・知人と一緒に参加してもらうことで行きやすくなると考える。友人を連れてなど複数人で献血をしやすい環境づくりも重要であると考えられる。

(4)献血の感想

一番多かった感想は「意外と大丈夫」であった。初めて献血をやる際にはやはり恐怖心が伴う。しかし,献血をしてみると想像していたよりはたいしたことがなかったという人が多く,実際に経験してもらうことによってしか感じられない部分が多くあると思われる。

初回献血はハードルが高く,少しでも献血に参加しやすい取組みや制度があればより献血者は増加するはずである。次に多かった理由は「またやりたい」であった。こうした「またやりたい」という感想や「意外と大丈夫」といった,実際に経験した人々の感想をもっと公表していくべきだと感じた。

献血をしたことのない人にとっては,献血は痛くて怖くて不安感の強いものである。実際に経験した人々の肯定的な感想を知ってもらうことによって,献血に対してよい印象をわずかでも抱いてもらえるはずである。3番目が「早かった」という感想であった。

献血は時間のかかる行動ではあるが,実際にかかる時間よりも長い時間をイメージしていると考えられるので献血に関する正しい知識を人々に知ってもらうことが大切である。

4.まとめと今後の課題

本研究では,被検者を献血の有無,ボランティアの有無によって「献血群」,「ボランティア群」,「なし群」の3群にわけ,援助規範意識・攻撃性・性格特性・献血へのイメージの差を検討した。さらに,献血未経験者の献血への「関心」「協力意思」と,援助規範意識・攻撃性・性格特性・献血へのイメージの関連を調べた。

献血経験者は愛他的な精神から献血を行ったとはいえないが,献血未経験者にとって献血という行動が愛他的で自己犠牲的な活動であると認識されている。また,献血しないことに対し罪悪感を抱きやすい人は関心も協力意思も高く,献血も行う傾向にあることが示された。

献血のイメージは,実際に献血を体験することでマイナスイメージを払拭されると考えられる。献血行動と性格特性の関連は示されなかった。

今後の課題として,献血経験者を1回のみ経験と複数回経験をわけて分析を行うことが挙げられる。本研究では1回のみ経験と複数回経験をまとめて献血経験者としていたが,献血経験が1回のみと複数回の人では特徴が異なることが示された。

初めての献血に行く理由として好奇心が多く挙げられていたため,そのような人々が次回以降も献血に協力するとは限らない。そういったことから,献血経験が1回のみと複数回の人をわけて分析を行う必要性がある。







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